「普通に働く」って何だろう? 学生と遺族の対話

2020年1月7日の朝日新聞夕刊に「福岡過労死を考える家族の会」についての記事が掲載されました。これをきっかけに、麻生医療福祉専門学校福岡校ソーシャルワーカー科の学生さん2名(永松大河さん、松原俊輝さん)と、当会代表の安徳さんの対談が行われました。2020年2月のことです。
安徳さんと学生さんとのやりとりの一部をご紹介します。質問者は安徳さんです。

―なぜ、遺族に会おうと思ったのでしょうか?
卒業論文として「過労死・過労自殺の現状と課題」についてまとめていました。
遺族にお会いして何故過労死をされたのか、当時のご遺族のお気持ちなどをお聞きしたい、と思いました。

―これから社会に出る若い世代の方が、働き方について興味を持ち卒業論文のテーマに選んで  くださったことを、大変うれしく思いました。
 なぜ卒論のテーマに過労死問題を選んだのでしょうか?
以前、飲食店でアルバイトをしていました。
キッチンで料理を作る仕事です。
料理の作り方は「見て覚えるだけ」で、覚えられず…。
聞いても教えてもらえませんでした。
上手くできなかった時には全員の前で怒鳴られました。

その後も失敗の度に怒鳴られ続けました。
勤務時間も本人に確認もなく、朝から夜まで勝手にシフトが組まれていたこともありました。
知識がなかったために、これが「普通」なのかと思っていました。

クローバー

ですが日に日に心身がきつくなり、楽しいと感じることよりも仕事をすることの不安が多くなってきたので、やめました。
これがもし正社員だったら辞められていなかったかもしれません。
社会では何が「普通」なのか、正しい知識を得て社会人になりたいという気持ちが沸きました。
それで、「過労死」を研究課題に選びました。

―卒論を通して、感じたことは?
研究前は、過労死する人は精神的に弱い人間なのだろうと思っていました。
しかし、そういうことではなかった。
長時間労働や人として尊重されないパワーハラスメントが原因で、脳・心臓疾患になったり、心を病んで自ら命を断つのだと知りました。


対談を終えて
目の前にいる学生さん二人はとても礼儀正しく笑顔が印象的でした。
春からは社会人になることを嬉しそうに語る姿から、期待に胸の内がはちきれんばかりに膨らんでいるようでした。
後日、完成した卒業論文が丁寧なお礼文と共に送られてきました。
考察の中の「過労死は他人事ではない」という言葉が印象的でした。
純粋な若者の輝きを消す社会でないことを、あらためて願います。
(安德 晴美)

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