過労死等防止対策推進シンポin福岡のご報告①

2021年11月5日、過労死等防止対策シンポジウム福岡が開催されました。
コロナ禍が収束の兆しを見せている中での開催で、用意した席がほぼ埋まる盛況となりました。
ここでは産業医の大室正志氏による基調講演の内容をご紹介します。

皆さま、産業医は何科の先生かご存知ですか?
実は、産業医は、臓器別に専門科目が分かれる臨床医と異なり、企業が直面する安全健康リスクをすべて担当するという点で、臨床医とはまったく別の職業と言ってよいものだそうです。

大室医師は、ストレスに関する分析から過労死・過労自殺を防ぐための視点を提示されました。

現代は継続的な緊張状態を強いられる環境(比喩的に言えば、隣の席にずっとライオンが座っている状態)になってきており、企業も、過労死防止の観点から、この環境の変化に目を向ける必要がある時代になっています。
人は、進化の過程で、疲労感というアラートを、使命感、達成感などによって書き消してしまうよう進化しており、本来は疲れがたまっていてもそれを認識できていないという事態になり得ます。

過労死・過労自殺の防止の観点からは、第一に、「過重労働(長時間労働)とそのセットである睡眠不足は身体に悪い」という認識に立脚することが重要です。

疲れ、睡眠不足については、疲労蓄積度調査や産業医面談でもチェックされますが限界があり、やはり会社による時間管理が重要になります。
アメリカでは巨大企業のCEOが短時間睡眠は時代遅れと宣言するなど、睡眠の重要性が見直されており、日本でも参考にすべきでしょう。

また、現代の労働者は、70歳まで働くことが求められるようになってきており、「長期間」労働の時代になっています。
さらに、以前には存在しなかった新しい業務も増えており、上司が業務負荷を把握できない事態も生じています。

このような状況の中で心身の健康を保てる職場をつくるためには、次の点が重要になります。

1.徹夜でなんとかしようという時間が無限にあるマネジメントからは脱却する必要がある。

2.有限の時間を計算し、時にはNOと言える環境にする。

3.言わなくてもわかるという意識から脱却し言語化を意識する。

4.特に「説明する」ことを当たり前の人間関係をつくる。

5.疲労に気付く体制づくりをする。

約30社の産業医を務められている大室医師の講演は、会社内の現場を知る産業医の視点から会社が改善すべきポイントを押さえた内容であり、非常に勉強になりました。

弁護士 星野 圭

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