過労死基準とは?脳・心臓疾患等の場合

過労死の大きな分類のひとつである身体的な病気に関して紹介します。

Ⅰ 脳血管疾患及び虚血性心疾患等の場合

1.認定基準の考え方

厚生労働省は,「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」(平成13年12月12日基発第1063号)という,身体的な病気に関係する労災(過労死を含む)の認定基準を公表しています。

認定基準は,8つの対象疾病(脳内出血,くも膜下出血,脳梗塞,高血圧性脳症,心筋梗塞症,狭心症,心停止,解離性大動脈瘤)による病変ないし病死が発生した場合に,業務に関係する異常な出来事,短期間の過重業務または長期間の過重業務の存在という認定要件を満たせば,労働災害と認めるという行政運用上の基準です。

認定基準の内容について,詳しくは,「過労死(脳・心臓疾患)の労災補償について」の項目をご覧ください。

2.認定基準は絶対の基準ではありません

注意していただきたいのは,厚労省の「認定基準」は絶対的な基準ではない,ということです。「認定基準」はひとつの目安ではありますが,あくまでも行政運用の一部分を示したものにすぎません。

厚労省の「認定基準」には当たらない場合でも,過労死の労災認定が認められている事例はたくさんあります。

認定基準にあてはまらない(と労働相談や労働基準監督署で言われた)としても,あきらめる必要はありません。あきらめるよりも,「過労死」にあたることの証明手段を検討しましょう。

3.典型的な場合

・発症前1か月間~6か月間にわたって,1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働がある場合

・発症前2か月間~6か月間にわたって,1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働がある場合

・発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働がある場合

・過大なノルマがあり,ペナルティも重い場合

・重大な事故に直接関与した場合

4.こんな場合でも認められています

・8つの対象疾病にあたらなくても認められます。

例)喘息発作による死亡,てんかん発作,消化器潰瘍

・診断書に病名がはっきりと書かれておらず,対象疾病にあたるか否か不明な場合も,対象疾病ではないことが明らかでない限り,認められる。

・「労働者」にあたるかどうかが微妙な場合,例えば,管理監督者とされている部長,名目上の取締役についても,業務内容次第で,労災が認められ得る。

・自営業者については,特別加入の手続をとっていれば労災の対象になり得る。

・海外出張の場合でも労災になり得る。

・海外の現地法人に出向中の場合,特別加入の手続をとっているか,海外出張と同一視できるようなときには,労災になり得る。

・タイムカードがない人でも,パソコンのログ記録,メールやラインの送受信記録,同僚(元同僚)の証言などから立証できる。

・残業時間が月に40~60時間程度で,認定基準(月80時間以上)を満たさない場合でも,労働時間の問題(業務の量的な過重性)に加え,業務の質的な過重性があると言える場合には労災になり得る。

・もともと心臓病の持病がある,また,飲酒,喫煙をしているとしても,業務自体に過重性があるといえる場合には労災になり得る。

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