2023年11月2日、過労死等防止対策シンポジウム福岡が開催されました。
ここではNPO法人POSSE代表 今野春貴氏による基調講演の内容をご紹介します。

皆さまが仕事上の強い不安や悩み、ストレスを感じたとき、相談できる相手はいらっしゃいますか?また、その相談相手はどなたでしょうか?
厚労省「労働安全衛生調査(2020)」によれば、相談できる人がいるという労働者の割合は9割以上である一方、その相談相手のほとんどが家族や友人(8割)、上司・同僚(7割)となっています。今野氏によれば、これは逆に「社会的な助けがない」ことの現れと考えることができます。
POSSEでは労働や生活に関する相談を年間およそ5000件受け付けています。その経験から、たとえ相談者ご本人が「上司とうまくいっていない」といった人間関係上の問題や「自己都合退職後の生活相談」として語っていることであったとしても、その根底には長時間労働や自己都合退職に追い込むためのパワハラなどの労働法違反の問題が存在することが多く、相談を受ける側にも注意が必要とのことでした。
あなたに知っていて欲しいこと
たとえば、過労死・自死・鬱を誘発する労務管理として
① 仕事を与えない、目を合わせない、挨拶をしない等の方法で心理的に追い詰める
② 企業側の「役に立たない」自分、他者へ「迷惑をかけた」自分を繰り返し意識させる
③ 求人票には長時間の固定残業代が組み込まれた賃金が記載されていたことが入社後に発覚するも辞めさせない
などがあります。
劣悪な労働環境の影響でハラスメントが横行し、そのような環境に労働者が「適応」し、積極的に受け入れるよう仕向けるのです。
本来、企業側が支払うべきコストの代わりに、長時間労働によって労働者側が心身の健康(ときには命まで)を害するという形で支払っている、という不当な現状がここにはあります。
ご家族・ご友人が毎日遅くまで帰ってこない、顔色が優れない、性格が変わってしまったなどの異変を感じた場合、以下のことに注意しましょう。
①過労や劣悪な労働環境などの労働災害の存在を疑うこと
②労災保険という公的保険制度について理解すること
③労働問題に詳しい弁護士など専門的な支援ができる人に結びつくこと
かつて長時間労働が「常識」だった日本社会において、「過労死」という遺族の訴えが働き方に対する私たちの意識を変えていきました。一人でも権利を主張することやそれを支える周囲の人の存在によって「次」につながる、という言葉がとても印象に残りました。
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