2019年過労死等防止対策推進シンポ in 福岡参加レポート


2019年11月22日,JR博多シティで開催された過労死等防止対策推進シンポジウムに参加しました。

「パワハラ関連法案と今後のパワハラ防止対策」について,

神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科講師である津野香奈美先生の基調講演がありました。とても良い内容でしたので,その一部を紹介します。

講演では,パワハラの発生メカニズムが的確に分析された形で紹介され,パワハラが,被害を受けている労働者個人の健康に多大な悪影響を与えること,被害を受けている労働者に限らず職場全体にもメンタルヘルスの不調を生じさせること,パワハラによる生産性の低下によって会社にも多大なコストが生じ,ひいては国レベルにも大きな経済的損失をもたらすことが報告されました。

ただ,この講演で言及された最も大事なことは次のことです。

パワハラとは何か。法律で定義が設けられることになりましたが,パワハラについて,ある行為がその定義にあてはまるかどうかが重要なのではありません。

大切なのは,何がパワハラかではなく,「人を傷つける言動」が問題なのだということ。

パワハラという定義に当てはまらなければ問題がないというのではなく,「人を傷つける言動」を無くさなければならないということが大切なのだということです。

パワハラは,絶対にあってはならないことですが,それは加害者と被害労働者だけの問題ではありません。

職場全体でパワハラを防止,解消することは,すべての労働者にとっても,会社にとっても必要不可欠です。

パワハラを起こしやすいリーダーのタイプは大きく分けて2種類あります。

「専制型」と「放任型」です。

専制型は典型的なものですね。オレ様に従えというものです。

放任型は一見パワハラとは無縁に思えますが,部下の仕事に関心を持たず,部下のフォローをしない上司は,部下の間に自然と葛藤,軋轢を生みだし,パワハラを助長してしまいます。部下に任せっぱなしもダメなのです。

パワハラを発生させないためには次のような対応が必要です。

パワハラに遭遇した労働者は,それに加担しないようにしましょう。

パワハラが生じそうなときは,話題や雰囲気を変えるスイッチャーになることも重要です。

被害者に対しては自分が味方であることを伝えるシェルターになることも重要です。

上司は,部下との間に世代間ギャップがあることを知りましょう。

「おれの若い頃は・・・」は通じません。

部下世代が仕事に求めているものは,自分の仕事や存在価値が認められることです。単純なやりがいや達成感ではありません。部下の話をよく聞き,仕事ぶりを尊重し,評価しましょう。

職場全体の雰囲気を良くし,パワハラを生まないひとつの手段は,職場全体の礼儀正しさを高めることだそうです。

名前については「さん」付けでの呼びかけを徹底すること,上下を問わず敬語を使うこと,このような取り組みが,職場全体の雰囲気の改善,生産性の向上,顧客満足度の上昇につながることになります。

どの会社でも今すぐ取り組めますね。

また,会社でパワハラを防ぐ方法のひとつとして,パワハラをしないことをきちんと評価する人事システムをつくることが重要だとのことでした。

あたり前のように思えますが,労働の現場ではパワハラをする人が出世をすることもありますよね。これはダメです。

パワハラをする人については,会社がきちんと懲戒処分をしなければ,被害がエスカレートします。

会社が加害者にきちんとメッセージを発することが大事です。

パワハラの未然防止は,個人と組織の成長のためにある。パワハラの未然防止が成長につながるということがまとめでした。

どの職場でもパワハラを生み出さないために,多くの人に知っていただきたい内容でした。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする